紫イペ情報館

学術研究

機能性食品による発癌抑制と抗腫瘍活性

1997年6月14日
臨床補体 IN 岡山

金沢大学癌研究所免疫生物部 坂井俊之助 松井泰子

目的

本来薬品は植物、動物の成体成分から発見されたものが多く、またその薬理作用も多種類に及んでいる。本研究ではブラジル産ノウゼンカズラ科、紫イペの樹皮成分にマウスウイルス乳癌発癌抑制作用を持ち、ヒト及びマウス由来の各種の培養腫瘍細胞株傷害活性を有する成分が含まれることを見い出したので、報告する。

 

方法

a) :成体レベルでの実験

 

1.FMマウスは生後6ヵ月から1年目にかけて通常飼育では、高率に乳癌を発することが知られているが、当マウスをSPF条件下にて飼育すると発癌は全く認められない。この事からFMマウスの乳癌発癌はウイルス性発癌である事は明らかである。
我々は生後1か月令の通常飼育80匹を雄雌に分け、朝夕2回固形飼料に濃縮イペ粉末を混ぜ、経口摂取させた。飼料は通常飼育と同一の(RM-3)を使用した。FMマウスは東大医科研実験動物施設より種分与を受け、自家繁殖させた。

 

2.対照群は雄25匹、雌20匹のFMマウスを通常飼育した。

 

3.すでに乳癌発生個体にイペ粉末を摂取させると延命、腫瘍退縮効果が認められるかどうか検討した。1cm以上の腫瘍魂を有する個体(雄38匹、雌42匹)を実験に供した。

b) :培養細胞レベルでの実験

 

1.試験管内培養腫瘍細胞株に対しての、濃縮イペの傷害作用の有無を検討した。培養細胞株はヒト子宮頚部癌由来Hella cell、ヒト胃癌培養細胞株KKLSおよびKATOⅢ、脳腫瘍培美細胞株Astorocytoma U733、ヒトリンパ腫瘍細胞K562、マウス腫瘍細胞株としてはMeth-A(メチルコランスレン誘発肉腫)を用いた。

 

2.対照としてマウス正常細胞を実験に供した。マウス腹腔マクロファージ、および脾臓リンパ球を単個浮遊細胞に作成して用いた。培養は直径50㎜深さ13㎜のプラスチック製ファルコン社製を用い、各時間、各濃度で3枚づつ作製し細胞数の平均値を取った。培養液はすべて10%牛胎児血清を含むRPMI1640もしくはDMEMを濾過滅菌後使用した。

 

3.培養細胞数は1×100000~1×1000000とし、各プレートに加える濃縮イペ濃度は10mg/mlPBSをストックとし、表1に示すように段階的に添加した。添加後24時間毎にトリパンブルー染色にて生細胞数を計測した。

 

結果

a) :イペ濃縮粉末によるウイルス性自然乳癌発生抑制と発癌個体の延命効果

 

1.濃縮イペ粉末混合飼料を摂取させたFMマウスは雄雌ともに生後5ヵ月目全例腫瘍の発生は認められなかった。生後6ヵ月目に雄雌共2例に直径1cm内外の小さな腫瘍塊の発生を認め、以後10ヵ月令まで腫瘍塊の増大は認められなかった。
また残り個体は全例正常で乳癌発生率は0.05%であった。

 

2.対照の通常飼育では生後6~7ヵ月に97.7%の個体に発癌が認められ、約10ヵ月令でその半数が、12ヵ月以内にほほ前例死亡した。

 

3.濃縮イペの正常細胞傷害活性を生じさせる細胞の条件としては、濃縮イペは分裂増殖のさかんな培養細胞を効果的に傷害するが、正常の分化した分裂休止期には無効であった事から、イペは腫瘍細胞のみに傷害活性を有するか、あるいは分裂増殖期にある細胞を傷害するかのいずれかと考え、以下の実験を行った。

 

1) NIH3T3細胞はマウス由来の繊維芽細胞で増殖の活発な培養細胞であるが、濃縮イペはNIH3T3細胞をも腫瘍細胞と同様に傷害した。

 

2) マウスT細胞、B細胞の休止期の細胞はイペの傷害を受けないが、分裂刺激剤ConAおよびLPSを 添加し、T、B細胞の幼若、染色体形成を確認してからイペ添加培養を行ったところ、腫瘍細胞と同様に傷害された。

 

結論

南米一帯に自生するノウゼンカズラ科の紫イペは樹高30メートルにもなる巨木で、その樹皮成分に種々の疾患に対する治療効果が存在すると伝承されてきた。また健康食品として樹皮粉末が市販されている。しかし一部に培養腫瘍細胞に傷害活性があるとの報告はあるが、詳細な科学的研究はほとんどなかった。

本論文で紹介したウイルス性自然発生乳癌を抑制する作用は最初の報告である。ウイルス感染細胞の腫瘍化を抑制するのか、あるいは腫瘍化した細胞を傷害するのか、あるいは免疫系の活性化によってごく初期に腫瘍化した乳癌細胞を傷害するのかは現時点では何とも言えない。すでに発癌した個体に対しても延命効果がある事は直接腫瘍細胞を傷害する点が大きいのかもしれない。だが、発癌個体の延命は認められるもののやがては腫瘍化するものに対しては、直接作用と免疫系の両方が関与していると考えられる。

今後さらに分子生物学的手法によってイペにより生じる細胞内の分子変化を研究する必要がある。他の自然発癌ウイルスによる発癌に対しては、肝癌をC3H/Heを用いて実験中である。また、免疫系とイペの作用の関連を知るためには、炎症反応と免疫反応に深いかかわりを持つ実験的形質細胞腫発生などが有効なモデル系と考えられ、これも現在実験中である。

なお、イペの木全体を考えた場合、植物として出発点としている葉の生合成なども見逃せず、現時点では限られてはいるが、有効成分の同定とともに最も有効な成分の存在する全体の構成部分の同定も、興味のある点である。本研究では時間の都合上、免疫系、補体系へのデーターを割愛したが、機会を改めて発表準備中である。

Cancer News Jounal.Spring,1982 26-27.Daud’Arco(Tabebuia avellanedae)
Shunnnosuke Natsuume Sakai,
The suppression of tumor development and antitumor cell activity by the balk of Tabebuia avellanedae in South America.
The abstract Japanese of 17th Inflammation Tokyo 1996.
The proceeding of the Japanese Cancer association.55th annual Meeting 1996.
The first Meeting of the induction of specific immunity against cancer tumor cell,Tokyo 1997.