紫イペ情報館

学術研究

機能性食品による発癌制御と抗腫瘍活性

1996年10月11日
第55回 日本癌学会総会 (横浜)

金沢大がん研究所 助教授 坂井俊之助

第55回 日本癌学会総会 記事

1023 機能性食品による発癌抑制と抗腫瘍活性
坂井俊之助、松井泰子  金沢大学がん研究所 免疫生物部
Supression of tumor development and killing activities for tumor cell by Tabebuia avellanedae
Natsuume-Sakai S , Hiroko Matui
(Dep of Immunobiology,Cancer Res, Inst. Kanazawa unive.)

ブラジル産ノウゼンカヅラ科植物(紫イペ)の樹皮は古代より薬用に用いられてきた。本研究では樹皮粉末の発癌防止機能と腫瘍細胞傷害活性を乳癌多発系近交系マウスFM、また継代移植株を用いた実験系としてはBALB/cに原発したMeth-A、及びヒト、マウスの培養細胞株を用いて検討した。

1)

遺伝的に乳癌多発系統であるFM近交系マウスの発癌個体に樹皮粉末を混ぜた飼料を与えたところ、約70%の発癌個体に延命、腫瘍増殖阻害が認められた。これに対し通常飼育は6か月から発癌し1年以内に全て腫瘍死した。

2)

生後1か月の未発癌個体に樹皮粉末を混ぜた飼料を与えた場合80匹中3例に6か月目に腫瘍発生を認めたが、その後1か月以内には腫瘍の退縮が見られ、他の個体においては現時点、10か月令でも発癌個体は認められていない。

3)

移植継代腫瘍Meth-Aを1×100000000の細胞数で原系統のBALB/cの腹腔に移植し樹皮粉末を腹腔注射した実験系でも明らかな延命効果が認められた。

4)

Meth-Aの培養系での実験結果は1×10000000の腫瘍細胞に対し樹皮粉末5-10mgによって24~48時間以内に全ての腫瘍細胞の死が認められた。ヒトHella細胞、KATOⅢ細胞等においても同様の結果が確認できた。

結論:

本樹皮粉末には腫瘍細胞自体の増殖阻止と傷害作用があり、さらに発癌抑制効果が認められることがわかった。また、発癌抑制は早期に腫瘍細胞を傷害しているか、癌抑制遺伝子に作用しているものと思われる。

 

第55回 日本癌学会 結論

金沢大学 がん研究所 坂井 俊之助

南米産ノウゼンカズラ科植物(Tabebuia Avellanedae)の樹皮には発癌防止作用と腫瘍細胞増殖阻害作用を持つ物質が含まれることが本実験により明らかとなった。

乳癌発癌モデルを用いた結果から、乳癌ウィルスの発癌プロモーターの作用を効果的に阻害する物質が含まれること、またすでに乳癌を発癌している個体においても腫瘍増殖阻害作用があることが認められた。

成体レベルでの腫瘍細胞増殖阻害は宿主介在性の免疫反応の亢進等による場合と、直接腫瘍細胞に作用する場合が考えられ、本研究では細胞培養系にイペを加えることによって分裂増殖の阻害作用を明らかにした。

イペ粉末は正常細胞には傷害活性を有しない優れた特徴が認められた。この作用は腫瘍細胞に選択的にイペが作用するという場合と、分裂増殖の盛んな細胞の細胞分裂のある一定時期に作用するという場合のいずれかではないかと考えられるが、培養系でのイペの細胞増殖阻害は、イペの濃度と反応の時間に完全に依存したので後者の細胞分裂の特定の時期に作用する考えが妥当であるのではないかと考えている。また成体への宿主介在性の効果も別の実験結果から判明しているし、本樹皮に含まれる有効成分の物理化学的検討も部分的に解析されているが、これらの結果はいずれ別の機会に発表したい。